おさとり

人間生きていると色々と嫌なことが起こります。
病気になったり、年をとって身体が思うように動かなくなったり。
人間関係の悩みもあります。
仕事上の悩みもあるでしょう。
お金に苦労している人もいます。
この生きていると、どうにも避けられそうにないこれらの悩み、苦しみから逃れるにはどうしたらいいか。
その術をお釈迦様はおさとりになり、人々に説いたのです。
では、そのお釈迦様の説かれた内容とはどんなものなのでしょう?
人生において生起する苦しみを全て無くしてしまうことなど出来るのか?

お釈迦様はこう説かれます。
人の世の苦しみは、無常であるこの世への執着より起こる。
故に執着を離れれば、苦しみもまた消え去る。と

お釈迦様はたくさんの言葉を残されましたが、その中心となっているのは、このような考えだと思います。

この世は無常です。
常に変化して行きます。
永遠に変わらぬものなど何もありません。
変化して行くものをいつまでも変化させずに自分のものにしておきたいという気持ち。
これが、執着です。
そして、一つのものが得られれば、さらにその次を求めてゆく際限のない欲望。
これもまた、執着。

執着はいずれどこかで無常である現実に裏切られ、求めるものが得られないがゆえ、心の中に苦しみが生まれます。
困難ではあるけれども、この原因となっている執着を取り除けば、苦しみもまた消えて行く。
こうお釈迦様は説かれ、実践的な方法を示されました。
八正道や中道といわれる教えです。

しかし、教え(戒め)を忠実に守るのはなかなか難しく、やはり執着を捨て去るのは容易なことではありません。
容易ではないけれども、たゆまず努力せよ、とお釈迦様は説かれます。
困難な道の果てに、何物にも代え難い安らぎの世界がある。と

お釈迦様の時代から二千数百年、仏教は多くの国に伝わり、様々に形を変えてきました。
しかし、共通して言えることは、仏教とは、執着(欲望)を離れた安らぎを求める宗教である。ということです。

今、癒しが求められている時代。
物欲に振り回されることに、私達は疲れ始めているのかも知れません。
お釈迦様の執着を離れよと言う言葉。
時をこえて、静かに心に響いて参ります。

住職合掌

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