こだわりを捨てよ

 こだわりを捨てよ。
これを、禅門では放下著(ほうげじゃく)といいます。
中国の言葉ですが、要するに”捨ててしまえ”ということ。

人生の苦しみの多くは執着の心より起こります。
執着の心とは、つまり、”こだわり”。
仏教はこの”こだわり”を捨てよと説きます。

こだわりが良い結果を生むこともありますが、往々にして、人を出口のない欲望と迷いの渦中に巻き込んでいきます。
しかし、分かっちゃいるけどやめられない。
お金へのこだわり、異性へのこだわり、仕事上でのこだわり…色々あります。
捨てたくないこだわりもあったりします。
人生にプラスになるこだわりもありますが、いずれにしても、こだわりが人の心に大きな負担を強いると言うことは間違いありません。
良くも悪くも人生こだわりだらけ。
どうしたら、様々なこだわりから自由になれるのでしょう?
どうしたら、仏様のような柔和な心になれるのか。

ここで、禅の心は、さらに 放下著!捨ててしまえ! と畳みかけてきます。
こだわりを捨てる―ことにもこだわるな。ということ。
なんだかややこしいですが、
何が何でも放下著!
どうでもこうでも捨ててしまえと言うわけ。
これが実は、放下著の更なる二段目の意味ということでしょうか。

さて、
あれやこれや悩ましい頭を抱えて、外に出ると、あたたかな五月の風と共に、澄み切った青空が何の屈託もなく迎えてくれます。
風も空も雲も、いつもあるがままです。
何のはからいもありません。
風は自在に空を駆けめぐり、雲は風と共にどこへでも流れてゆきます。
自由です。

悩みや、割り切れない思いがあるときは、ひとまずあれこれ悩んだ後、天気の良い日に自然のなかで散歩してみることをおすすめ致します。
人間と違い初めから何のこだわりもない自然の姿に触れると、こちらの心からもこだわりがすっと抜けていく気が致します。
季節は春から初夏、一年のうちで一番過ごしやすい季節。
ぜひ自然に大いに触れ、身も心もこだわりを捨て、爽やかにお過ごし頂きたいと思います。

住職合掌

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