「看脚下」 足もとを見よ

 禅の基本は、自分の身の回りを含め、ただ今現在の自己のありようを正しく見つめるというところにあります。
そのことを端的に表している言葉がこの「看脚下」。
「看脚下」あるいは同じ意味の「脚下照顧」(読みはキャッカショウコ)という言葉は禅寺の玄関によく掲げられています。
これは、直接的には「足もとを見よ。」
つまり、履き物を揃えなさい、という意味なのですが、
さらに詳しく言えば、
「あれこれ頭で考えるよりも、まず自分の今していることをきちんとせよ。
靴を脱ごうとしているのであれば、まず靴を揃えることから。
ただ今現在の行い、それが大切である。」
ということ。
人は未来に生きているわけではなく、過去に生きているわけでもありません。
常にただ今現在の進行形が私達です。
今を外して、どこに生きる場所があるのか … そうこの「看脚下」という言葉は語りかけています。

お正月は、日本人にとって特別な季節。
旧き年が去り、新しい年がやってくる。
新しい年を迎えるにあたり、私達は様々な準備をして、普段とは違う厳粛な気持ちでお正月を迎えます。
いつもはあわただしく過ぎてゆく日常が、お正月の時には心なしか静かにゆっくりと過ぎてゆくような気がするものです。
めまぐるしく変わり続ける現代の世の中ですが、社会全体の雰囲気がやわらぎ、余裕のある時間を持つことが出来るお正月の期間は、私達の社会にとってとても大切なものだと思います。

お正月は、正しい月と書きます。
身を正し、心を正し、静かな気持ちで自己を点検して、新たな年に向かって着実な一歩を進めて参りましょう。
住職合掌

今月の言葉 に戻る