観世音

常仙寺のある高崎市には、市街地の南に大きな白衣観音像が立っています。
小高い山の上にあり、高崎のシンボル的存在です。
この白衣観音像、ちょうど高崎の街を見下ろすように立っていて、高崎を常に見守っているという感じを受けます。
観音様の正しい名前は観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)。
観世音とは、世の様子を観ているという意味。
常に人々の世を見守り、苦しんでいる人々を救おうとするのが観音様です。
高崎の白衣観音像が、山の上から高崎を見守るように立っているのもうなずけます。

観世音菩薩はその名から分かるとおり菩薩様です。
菩薩というのは、修行を積み自らは充分に仏になる資格があるのに、この世にとどまり続け煩悩に苦しむこの世の人々を救って下さる方。
慈悲の心の体現者です。
観音様の人々を思う心は、その心によって救われた人々に同じ心を呼び起こし、その人々の中に生じた同じ心(慈悲心)によって更に多くの人が救われていくという、慈悲の連鎖を作り出します。
仏教は人の心から心へ伝わり拡がってゆく宗教です。
人は思い思われることによって、安心を得、苦しみから救われることが出来ます。
今、生を得て同じ時間を生きている同胞と心が通じ合うことにより、人は大きな安らぎを得ることが出来る。
これはいつの時代においても変わらぬ真実です。
効率的で便利であるがゆえ、つい自分だけで生きているような気になってしまいがちな現代の世の中。
そんな世の中であるからこそ、他の人も自分と同じように、同じ「時」を、同じ「命」を生きている、という同胞としての意識を強く持つべきなのではないでしょうか。
この意識の先に観音様の慈悲の心が遠く続いているように思います。
住職合掌

今月の言葉 に戻る