お盆

 盆・暮れ・正月−−日本の国民的な休日です。
毎年この季節は、日本の国がほぼ一斉にお休み態勢に入ります。
テレビで映し出される高速道路の大渋滞は、いかに私達日本人が一斉に休みを取っているかを物語っています。
何もこれほど一斉に休まなくても良いのではないかとも思いますが、なぜか、この時期は昔から日本の伝統的な休日です。
世の中が複雑になり、様々な労働形態があり、価値観も多様化していますが、やはり盆暮れ正月は日本人にとってある種特別な休日です。
英語で休日のことをホリデー(holiday)といいます。
これは聖なる日という意味。
キリスト教の安息日(日曜日)やその他クリスマスなどの聖日を仕事の休日にしたことに由来しています。
日本の盆暮れ正月も、民族や宗教は違いますが、ある意味私達にとっての聖なる日的な要素があるように思います。
お盆にはお墓参りをして亡き人々の魂を家に招き、もてなしをして共に過ごす。
暮れから正月は大掃除をして家の中を綺麗にし、あらたな年神様をお迎えする。
普通の祝日やゴールデンウィークにはこんな事はしません。
社会の中から伝統的なしきたりは、次第に消えていっているかも知れませんが、お盆や、大みそかや、お正月の何かしら普段と違う特別な日であるという感覚は、変わらずに日本人の心の中にあるように感じます。
盆暮れ正月は日本人にとっての聖日なのです。
明治以前の日本人にとっては、神も仏もご先祖様も、みな尊い聖なる存在でした。
仏が神に化身し、神は仏となって姿を現し、人は死んで仏となる。
神を敬い、仏を尊び、先祖の霊に供養する。
かつての日本人は、そんな豊かな宗教的感覚の中で生きていました。
神道だの、仏教だのという細かいことにはこだわらない、おおらかな、そして優しい、全てのものを敬う心を持っていたように思います。

命が燃え立つ夏の数日、しばし仕事や雑事を離れ、今は亡き方々のことを想い、その方々の魂と共に、そして近しい人々と共に過ごして頂けたらと思います。
そんなお盆のひとときの中で、周りの全てに支えられて生きている、たった一人で生きているのではない自分の命の本来の姿に触れることが出来るように思います。
住職記

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