水流れて、もと海に帰す

 最近、寺のそばでカエルの鳴き声を聞くことがほとんど無くなりました。
私が小さい頃、大体30〜40年くらい前は梅雨時になるとゲコゲコゲーゲー結構鳴き声が聞こえていたように記憶しています。
以前、雑誌に日本に生息している両生類の数が急激に減少して来ているという記事が載っていました。
調べてみると両生類の減少は、日本だけでなく世界的な傾向のようです。
原因は、都市化など人間の活動領域の拡大、そして人間の使う農薬などの化学物質の悪影響が主に考えられるとのこと。
皮膚が薄く環境の変化に敏感な両生類は、周囲の水に微量に含まれている化学物質を容易に体内に取り込んでしまい、それが害のあるものであればすぐに体にダメージを受けてしまう。
あまり目立たない存在であるが故、少しずつ減っていくとなかなか気が付かないですが、環境の変化(悪化)にまず真っ先に反応するのがカエルなどの両生類のようです。
少しずつ少しずつ私達人間は、自分達が住んでいるこの地球を汚してしまっていると言えるでしょう。
結局このツケは私達自身にも回ってきます。
子供達の間に増えているアレルギーやアトピーなどもその「ツケ」の始まりなのかもしれません。
地球に住んでいる生き物は人間を含め全て一蓮托生(いちれんたくしょう)です。
地球という大きいけれども限られたサイズの蓮の葉の上で全ての生命の営みが行われています。
蓮の葉のどこかが枯れたり破れたりしてしまうとすべておわり。
葉っぱの上で生まれ、どんどん活動力の増している私達人間は、足の下の自分たちが乗っている「葉っぱ」のことをよく考えて活動しなければなりません。
「力」は創造と共に破壊をももたらします。

「いのち」は儚いものです。
人間のせいで知らず知らずのうちに消えていくカエルたち。
私達もいずれ死んでいくことに変わりありません。
そして生まれてくる命もある。
現れては消え、生と死は繰り返されます。
儚いからこそ、いまのこの「いのち」を大切にしたいものです。
住職記

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