人の生を受くるは難く、やがて死すべき者の、いま命あるは有り難し。

 また、今年も暑い夏がやってきました。
いまクーラーの効いた部屋の中でこの文章を書いていますが、外ではさかんに蝉たちがミンミンジージー鳴いています。
蝉の声を聞いていると今日も35度を超えているであろう外の暑さが思いやられます。
一仕事を終えた後、ムッとする大気の中、犬の散歩に行って汗をかき、その後飲むビールの美味しいこと…
ついつい飲み過ぎて、毎日汗を沢山かいているはずなのに、いつのまにかズボンのベルトがきつくなってしまう…
お坊さんなのにこんなことでいいのか…そうは思うのですが、煩悩に打ち勝つのは容易ではありません。
つい易きに流れ、楽を求めてしまいます。
そんなこんなしている間に、いつの間にか歳を取り、頭か心臓の血管が詰まって救急車で運ばれて…
人生の時間は止まることなく確実に過ぎてゆきます。
人には誰でも、最後に死がやって来ます。
生まれた時、何十年かのタイマーにスイッチが入り、1秒また1秒残り時間が減ってゆく…それが人生の現実です。

 今月の言葉に掲げた「人の生を受くるは難く、やがて死すべき者の、いま命あるは有り難し。」という句は法句経(ほっくきょう)という釈尊在世の頃の言葉を集めたお経の中に出てまいります。
命は得難く、いつか終わってしまう、だからこそ今のこの命は有り難いものなんだよ…そんな釈尊の気持ちがよく伝わってくる言葉です。

暑くてついだらけてしまいがちなこの季節ですが、釈尊の言葉を胸に刻み、今の自分は何をなすべきか、何がしたいのか、先延ばしにせず自己と向き合い、時を日を大切に生きなければと思います。
住職記

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