めぐる命 輝く命

 一陽来復という言葉があります。
去って行った太陽が、めぐってまたやってくると言うこと。
厳しい冬もいつかは終わり、暖かい春がやってくる。
春は心楽しいものです。
そして、春が過ぎ夏が来て、秋からまた冬となり。
また春。
季節はめぐります。

春に咲き乱れる美しい花々、夏のじりじりと照りつける太陽、しみじみとした秋、ピンと冴えわたる静寂の雪景色。
全ては皆、移り変わり、去り、そしてまたやって来ます。
四季の移ろいの中には、様々な美しさが現れては消えてゆきます。
消え去って行くものだからこそ、なおさらに愛おしく、その美しさが際だちます。
この季節の移り変わりのように、時の流れの刹那の中に現れるはかない美は、私達の心に深い共感と感銘を与えます。

めぐる季節と同じように、人や様々な命も大きな目で見れば自然界の中を形を変えて回っています。
消えてゆくいのちがあり、生まれてくるいのちがある。
老いてゆくいのちがあり、成長していく若々しいいのちがある。
いのちもまた、地球という大地の上で大きくめぐっています。

お釈迦様の誕生日である、花まつりの”花”は、このめぐる命の象徴ではないかと思います。
花まつりでは、幼子の姿のお釈迦様の御像「誕生仏」に甘茶をかけて、お祝いをします。
この誕生仏は、大きく右手をあげて、天を指さす姿をしていますが、この姿は何か、授かったいのちを天地いっぱいに輝かすぞと、生まれたばかりのお釈迦様が高らかに宣言しているように感じられるのです。

4月は年度の変わり目。
学校や職場では、多くの別れがあり、そしてそれと同じくらい多くの出会いがあることでしょう。
季節と同じように、めぐる命と同じように、人生にも、悲しい時があれば、嬉しい時もあり、つらい時もあれば、楽しい時もあります。
悪い時には挫けず、良い時にはおごらず、常にそれぞれの局面で、ベストを尽くす。
持って生まれた能力、才能は人それぞれ千差万別、様々ですが、自分の持てる力を最後のひとしずくまで出し切って人生を生きたいものです。
それがお釈迦様が指先で示されている、”いのちを輝かせる”ということではないかと思います。

下は少し前に流行ったSMAPの歌です。

  そうさ 僕らも 世界に一つだけの花
  一人一人違う種を持つ
  その花を咲かせることだけに
  一生懸命になればいい

  小さい花や 大きな花 一つとして
  同じものはないから
  No.1にならなくても いい
  もともと特別な Only one

     「世界に一つだけの花」より


私達も、自分自身の一つだけの花を咲かせたいですね。
住職合掌

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