彼岸

仏教の目的は、いかにして煩悩から離れて、安らぎの世界、仏の世界に至るかというところにあります。
時折、私達は日常の時の流れに流されるまま、自分でも気が付かない間に、煩悩(欲望)の渦に巻き込まれ、そこから抜け出すことが出来なくなり、つらい思いを味わう時があります。
煩悩の流れの中にあっても、大きな渦に巻き込まれて行くのを未然に避けるためにはどうしたらよいのでしょう?
やはり、常に 彼の岸―仏の世界 を見つめる心の眼をどこかに持ち、身体をそちらに向けておく、ということが大切なのだと思います。

私がまだ小さい頃、寺の玄関に古いポスターが貼ってありました。
観音様の写真と共に、

 「諸人よ ここに道あり 心は風にさわげども しばし静かに坐るなり」

という言葉が書かれていました。
何かとても優しい、観音様に包みこまれるような感じで、子供ながらに何となく好きでした。

お彼岸は、仏様の心に近づいていただく季節。
お墓参りをして、亡くなられた方々の魂にふれ、また静かに自らの心のありようを見つめていただきたく思います。
自らの心を見つめ、調えるその先に、安らかな心の世界、仏の世界が広がっています。

住職合掌

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