おかげさま

 おかげさま という言葉ちょっと不思議な言葉です。
普段何気なく使っていますが、よく考えてみると何でお陰様なのかな? というような時がないでしょうか。
何もお世話になってないんじゃないかな? と思う様な場面でも、いつでもどこでも おかげさま という言葉を私達はよく使います。
単に丁寧な表現として使っているとも言えますが、
人により、場面によっては、ちょっとオーバーかなと感じる時があるかも知れません。

 でも実は、どんな場合であっても、全然オーバーなんかではないのです。
オーバーどころか、おかげさま という言葉を何かにつけて口にするという事は素晴らしく的を得た習慣だと思います。
何故かというと…
それは世の中でお世話になっていないものなんて無いからです。
世界は一つ人類は皆兄弟
なんて昔どこかで良く耳にしましたが、実際その通りで、世界中の国はいまや経済的にほとんど一つになっていますし、はるかなルーツを尋ねれば人類は皆兄弟というのもまず間違いのない事実です。
人類どころか生き物は皆兄弟とも言えます。
世の中に全く単独で存在しているものなど何もありません。
相互に関係しあって存在しているのがこの世界です。
ですから、いつでもどこでも おかげさま というのは、誠に理にかなった発想といえるのです。

 でも中には、おかげさま なんて思わない。私は人の世話になんてなってない。一人で頑張っている。という人もいるかも知れません。
そんな人は次のような状況を考えてみてもらいたいと思います。
 ある日目が覚めたら、そこはいきなり全く何もない荒野で、周りには誰もいない。あるものといえば、わずかな食料と簡単な道具だけ。
こんな状況に、もしなってしまったとしたら果たして生きていけるでしょうか?
便利な社会生活に慣れている我々現代の人間には、まず生き延びることは不可能でしょう。
コンビニは当然ありません。
水道もありません。
大体まわりに人がいません。
荒野に一人っぽっち。
いや、私はサバイバルは得意だから大丈夫。という人も中にはいるかもしれません。
でも、そのサバイバルの技術はどうやって身につけたのでしょう?
誰かに教わって? それならその誰かの おかげさま です。
本から独学で? それならその本を書いた人の おかげさま です。

周りの世の中があってこそ、現在の私達があります。
我々は世の中の一部であり、そこから離れて存在することは出来ないのです。
完全に一人で生きている人なんていません。

あなた がいるから、わたしがいる。
わたし がいるから、あなた がいる。
きのう があるから、きょう があり。
きょう があるから、きのう がある。
すべてはおたがいさまおかげさま。

いつでもどこでも おかげさま を大切にしたいものです。

住職合掌

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