不瞋恚戒

 今月のテーマは怒り。
経験的にも分かるように、怒りは大変な心の乱れを招きます。
心の乱れは、身体の調子を乱し、様々な病気の元となります。
昔から「病は気から」という言葉があります。
心の状態=気持ちの持ちようで、病気にもなり、また、病気から逃れることも出来る。
「病は気から」とはそんな意味かと思います。

近頃、活性酸素という言葉が話題になることが多いですが、怒りもこの活性酸素を大量に体内に発生させるそうです。
そして、その活性酸素が体内の細胞を傷つけ、やがて潰瘍やガンを作り出すとのこと。
また、それだけでなく様々な病気の元になるそうです。
怖い話です。
怒りはまた、経験的に知られているように血圧を上げる作用もあり、身体にとって良いことはありません。
まさに「怒り」は病を招く”気の乱れ”と言えます。

そして、怒りは怒りを呼びます。
怒りは、心の中に疑いや憎しみの心を生み、更なる怒りを作り出します。
そして自分の心の中だけでなく、周囲の人々の心にも怒りの心を呼び、怒りの輪を広げて行きます。
怒りの輪が拡がって行くと言うことは、不幸の輪が拡がって行くと言うこと。
悲しいことです。

ダンマパダという釈尊の言葉を集めた古いインドのお経の中に、「怨みに対するに怨みをもってすればついに怨みの止むことはない」という言葉が出てまいります。

テレビで毎日のように映し出される、いつ果てるとも知れず続く中東の戦争。
そして、テロ。
恐怖が暴力を生み、暴力が憎しみを生み、憎しみが報復を生み、報復が新たな恐怖を作り出す。
悲しい円環を描いて恐怖が続いていきます。

不瞋恚戒は、仏教徒が守るべき「〜をしてはいけない」と言う十の戒めのうちの一つ。
自分の為だけでなく、人のためにも、或いは社会のためにも、自己の怒りを抑えよと言うこの仏の戒め、こんな世の中だからこそ大切にしたいものです。

住職合掌

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