身心自からも愛すべし

 思いやるとはどういう事でしょうか。
思いやるためには、まず相手の立場や気持ちへの共感が前提にあります。
共感とは、もし自分が相手の立場だったらどう思うか、感じるかということを想像できるということ。
この共感を元に相手への思いやりが生まれて来ます。

命は得難いものです。
そしていつか必ず私達の体から離れていくものです。
今日あるように明日がある。
日々当然のように私達は無意識に思っていますが、いつか必ずもう明日がやってこない日が訪れます。
命はレアなものです。
清潔で管理された日本のような社会の中で生活していると、日常の中では、命などという人生の当然の前提部分の存在を感じることが若いうちは非常に少ないと思います。
重い病気や大きな事故にあって初めて自分の命の大切さに気付く。それが一般的でしょう。
恵まれた環境の中で生きているからこそ、命の大切さ、得難いこの自分の命の大切さをもっと日常的に切実なものとしてよく考え意識しなければならないと思います。
自分の命の大切さを生理的感覚的に直接に感じ取ることができれば、それは他人の苦境に遭遇した時、何とかしてやりたい助けてあげたいという気持ちが自然に出てくるのではないでしょうか。
人間は、字のとおり人と人との間で生きています。
お互い助け合うのが自然なのです。
自分の大切さを分かっている人が、他人の大切さも共感し、分かってあげられる。
自分がこれだけ大事なのだから、相手もやはり自分と同じように自分が大事である。
これがつまり、自然な思いやりの心の原点だと思います。
自然な心を大切にしたいものです。
住職記

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