お陰様(おかげさま)

 今年は、節電でよしずや緑のカーテンが注目を集めています。
早めに梅雨が開け35度を超える暑さが続いていた頃、外でしばらく直射日光を浴びていると干物になってしまいそうでした。
そんな炎天下でも、木々は暑さなど感じないかのように青々と緑の葉を繁らせ涼しい木蔭を作り出しています。
自分の感じるこの暑さを、木は葉は感じないのか?そんな風に感じてしまいます。
大体あの炎天下で葉が萎びないでいられること自体不思議なことです。
根から吸い上げた水分を葉の表面から蒸発させて熱を放出している−−だから葉は萎びることが無く、水分が蒸発する時に熱を逃がしているから木蔭は単なる日陰よりも涼しい−−テレビ番組でその仕組みを説明していましたが、自然の力の精妙さには本当に驚くべきものがあります。
同じ仕組みを人工的に作ろうとすれば、多分やたら大がかりな機械になり、当然電気を使わなければ動かないのでしょう。
二酸化炭素を吸収し栄養や酸素を作り出している光合成にしてもしかりです。
自然界の精妙さに比べたら、人間の作り出すものなど所詮浅知恵に過ぎない。
今回の原発事故と併せて考えるとそう想わざるを得ません。
人は自然の中で生かされている。
いくら頑張ってもお釈迦様の手のひらから出られなかった孫悟空と同じです。
原子力という如意棒を得意になって振り回していると、自分の周りの全てを壊してしまうかもしれません。
壊すことは出来ても、直すこと、創り出すことは出来ない。
私達人間は、自らの力の限界をもっと正確に謙虚に把握しなければなりません。
私達は自然があってこそ存在しうる自然の一部分です。
自然があってこその私達。
まずは木蔭に「お陰様」の気持ちを持ちたいと思います。

そして、8月といえばお盆。
亡くなられた方々とともに過ごす季節です。
亡くなったおじいちゃん、おばあちゃんがいて、お母さんお父さんがいます。
そして自分がいる。
自分のあとには子供がいて孫がいる。
人は人と人との間で生きています。
人との繋がりの中に人はいます。
一人で生きている人はいません。
お盆は、多くの人達の繋がりの中で自分が今あることを、静かに近しい人と一緒に感じる時間であって欲しいと思います。
海や山で自然と触れあうのも大変いいことです。
でも、お盆らしくお墓参りをし、自分の命の来た道を振り返ってみる時間も大切なことではないかと思います。
住職記

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