なせばなる

 日本人であれば「なせばなる」という言葉を大概どこかで聞いたことがあると思います。
この言葉は、
「為せば成る。為さねば成らぬ、何事も。成らぬは人の為さぬなりけり。」
という旧米沢藩主の上杉鷹山(ようざん)公の訓言の冒頭です。
やればできる。出来なければ、出来るまでやり続けるのみ。−−事に当たって不退転の気持ちの大切さを説いています。
 鷹山公は膨大な借金を抱え破綻寸前であった米沢藩の財政を非常に大胆にして綿密かつ粘り強い政策を実行することによって見事に立て直した名君。
 藩主となった時点で、当時の米沢藩には年間総収入の6倍の借金があり、かつ毎年更に借金をしなければやっていけない状態だったといいます。
原因は藩が大きかった頃の家臣をそのまま抱えていたため、人件費が掛かり過ぎていたこと、そして大藩の時のまま年中行事等にお金をかけていたこと、等のようです。
つまり、収入が大幅に減ったのに、収入が多かった頃のままの支出を続けたため、借金がかさんでしまった。
当たり前といえば、当たり前ですが、当事者の人々にしてみれば、やむにやまれぬ面もあったのでしょう。
ここまで、今の日本の財政状況とうり二つです。
違うのは、米沢藩には真に藩政を立て直そうと決意し、それを行動に移した藩主鷹山公がいたと言うこと。
人員の削減、給料の大幅カット、行事の簡素化、倹約の奨励、新たな産業の育成、学問の奨励etc
およそ、現在未来に渡って藩の収入を増やすことにつながるであろう事は考えつく限り何でもしたという感じです。
この大改革、当然反対する家臣との対立があり、その他の失敗もありましたが、結局鷹山公の晩年にはほぼ借金を完済する目途が付いていたようです。
15才で藩主となり70才で没するまで、ひたすら米沢藩のために生きた55年間。
「為せば成る。為さねば成らぬ、何事も。成らぬは人の為さぬなりけり。」
自らが残した遺訓そのままの人生でした。

人生は一度きり。
今月8日はお釈迦様がお生まれになった日です。
伝えられているその姿は右手の人差し指を高く上げて天を指さしています。
私には、その姿が「人生は一度きり、あなたって人は世の中に1人しかいないんだよ」というメッセージにも感じられます。
日常に流されず、自らの前途を見定め、悔いのない人生を生きたいと思います。
住職記

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