水無月

 私が子供の頃、大体30年〜40年くらい前ですが… 梅雨の季節になるとよくお寺の周りでカタツムリやカエルを捕って遊んでいました。
しかし今は、生け垣はコンクリート塀になり、側溝はフタをされて暗渠になってしまい、カタツムリもカエルもほとんど見かけなくなってしまいました。
現在、日本だけでなく世界的な規模でカエルなどの両生類が急速に減少してきているそうです。
減っているのは都市部だけに限りません。
主な原因の一つとして、環境中に放出されている農薬や様々な用途で使われている多くの人工的な化学物質の影響があげられています。
両生類は水の影響を非常に受けやすい生き物で、水に含まれている微量の化学物質も一緒に体の中に取り込んでしまい、その結果、体が弱ったり死んでしまったり子供が出来なくなったりするのだそうです。
その両生類が減ってきている。
それも急速に。
全世界的に。
これは環境中の生物に害のある化学物質が急速に増えて来ていることを意味している可能性があります。
目先の利益や便利さだけを考えて、本来存在しなかった化学物質を環境中に放出することは、結果的に最後は私達人間自身に災いを及ぼすことになります。
人間の体は体重の約6割が水です。
私達の体は半分以上水で出来ていると言うこと。
その体の水にも当然、両生類を減少させている原因になっている化学物質が含まれているはずです。
最近アレルギーを持った子供が非常に多くなっているのは、もしかしたらそんなことも関係しているのかななどと考えてしまいます。
人間の使う化学物質を減らすのは容易なことではないと思いますが、せめて生き物や環境への影響がなるべく少なくなるよう、考え、努力して行かなければならないでしょう。
未来の私達の子孫のためにも。

今回は、仏教とはあまり関係のないお話しになりましたが、自分の置かれている状況を確実に偏り無く把握することは禅の修行に通じています。
かつて、修行僧は雨季にはあまり外に出ず一カ所にとどまって修行をする習慣がありました。
修行僧でなくても、たまには、日常の成り行きから一歩離れて、自分とそして自分の周りとをあらためて観察してみることは必要なことだと思います。
梅雨の季節、仕事や学校がお休みでも、雨で外出できない日もあるでしょう。
そんな時、しとしとと降る雨を感じながら、自分とそして自分を取り巻く周りのことをゆっくりと考え直してみては如何でしょうか。
住職記

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