懺悔

 曹洞宗独自のお経で修証義(しゅしょうぎ)というものがあります。
宗祖である道元禅師の書き残した言葉の中から大切なところを抜き出して作られたお経です。
五つの章から成っているのですが、第二章が懺悔滅罪(さんげめつざい)という題名で懺悔の大切さを説いています。
(”懺悔”は一般にはザンゲと読みますが、仏教ではサンゲと濁らずに読みます)
内容は、題名の通り、懺悔によって罪が滅せられるということ。
つまり、自分の過ちを心の底から悔いる(懺悔)ことにより、その過ちから生じるであろう罪が消えてしまうということです。
俗な言葉ですが、よく「ゴメンですめば、警察はいらない」と言われます。
世間では謝って済むことと、済まないことがあります。
しかし、仏教においては仏教的な意味での罪は、心の底から謝れば(悔いれば)全て消えてしまうと言うことになります。
なんだかそれで良いのかな?という気もしますが、しかし、考えてみると”心の底から悔いる”というのはなかなか難しいことです。
何か悪いことをして反省し悔いる気持ちがあったとしても、心の中にほんの僅かでもその悪いことをした自分を否定しきれない気持ちが残っていたとしたら”心の底から悔いる”ということにはなりません。
人間は誰でも自分がかわいいものです。自分でも気がつかないうちに自分を守り、贔屓をしてしまいます。
ですから、心の底から悔いて懺悔して罪が消えるということは、口で言うほど簡単ではないと思います。
結局、人は罪を罪とも思わず生きていく存在であり、そんな自分を自覚して懺悔しきれないとしても懺悔し続けていく…その果てに”滅罪”があるのではと思います。

今年もあっという間に1年が過ぎようとしています。
お正月に、今年こそはと心に決めたはずのことが、いつの間にか手をつけないうちに終わってしまいそうです。
無常迅速。時は速やかに過ぎ去っていきます。
歳末に当たり、1年を振り返りきちんと反省をして、また新たな年に備えて参りましょう。
住職記

今月の言葉に戻る