水四訓

 今回紹介する言葉は、永平寺の禅師によって書かれた「水四訓」と呼ばれるもの。
水の特質を四つに分けて説いています。
読むと何か、水のパワーをもらえるような気がします。

 一、自ら活動して他を動かしむるは水なり
 二、常に己の進路求めて止まざるは水なり
 三、障害に逢いて激しく勢力を倍加するは水なり
 四、自ら潔くして他の汚濁を洗い清濁合わせ入るる量あるは水なり
  ――大本山永平寺七十一世高階瓏仙禅師書『水四訓』より――


 今、まさに春の季節。
冬、山に降った雪が解けて水となり、谷川は増水して激しい流れとなります。
雪であるときにはじっと動かず、解けて水となると大地にしみこみ岩をつたい、小さな水滴が集まって大きな流れとなり、岩をも穿ち、大地の形を変える力となる。
また、雲となって雨を降らせ、世界のあらゆる所に浸透し、生命のまさに命の源となる。
水の力は絶大にして融通無碍であり、変幻自在です。

瑞々しいと言う言葉があります。
溌剌として新鮮な、というような意味ですが、水水しいとも書きます。
命の源である水から連想されて出来た言葉のように感じます。
四月は年度の初め、小学校や中学校の新一年生を見ると、なにかちょうど新緑の若葉のようでまさに瑞々しく、こちらまで新鮮な気分になります。
人間の体には、子供で70パーセント、大人で60パーセントの水が含まれているそうです。
ある意味、大人だって子供にそれほど変わらず水水しい…つまり融通無碍の水の力を持っていると言うことも出来るのではないでしょうか。
人生そんな駄洒落のように簡単じゃあないよ…それもその通り。
しかし、体の六割が水で出来ているなら、もっと柔軟に、もっと屈託なく生きてもいいのじゃないか…そう考えてもいいように思います。

水は方円に従い形を変え、高いところから低いところへと流れていきます。
時には激しく、時には静かに。
常は液体でも、寒ければ凍り、暑ければ気体となる。
人生にも、硬いときも柔らかいときも、気体のようにもわっとぼやけたときも、色々あって全然良いのだと思います。
春夏秋冬。季節の言葉は春から始まります。
気分一新、体内の六割の水の存在とそのパワーを感じつつ、自然体で参りましょう。
住職記

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