天上大風

 良寛(りょうかん)さん…仏教に関心が無くても大概の人がどこかで聞いたことのある名前ではないかと思います。
良寛さんは、実在の江戸時代の曹洞宗のお坊さんで、新潟県の人。素晴らしい書や歌を残した名僧です。
良く小さい子向けの本の中で取り上げられる方です。
私が小さい頃読んだ良寛さんのお話は、すごく立派なお坊さんなんだけれども、子どもと遊ぶのが大好きで、ある日近所の子ども達とかくれんぼをしていたら子ども達がいたずら心を出して全員で良寛さんを残して家に帰ってしまい良寛さんは日が暮れるまで一人でずーっと隠れていたというもの。
まさに童話そのもの。でもこれは作り話では無く、これに類する良寛さんのエピソードはたくさんあります。
天上大風の話もその中の一つ。
ある日一枚の紙を持った子どもが良寛さんの所に来て言うことには、凧を作るのでこの紙に何か字を書いておくれとのこと。
そこで、良寛さんが書いたのが『天上大風』。誠に風通しの良い言葉で、いかにも空に上げると風に乗って高く飛んでいきそうな感じがします。
この凧、現存していてネットを探すと写真で見ることが出来ます。
大変素朴な字なのですが、本当にこれなら風に乗って飛んでいきそうだなと感じます。
なによりも、風よ吹けという純朴な良寛さんの心が伝わってきます。

 さて、今年は改元の年。
天皇陛下が代わり、平成から新しい元号になります。
昨年、清水寺の管長が発表した平成30年を表す字は「災」でした。
この今年の漢字、清水寺の管長が選んでいるのかと思っていたのですが、公募で決まるのだそうで、「災」の応募が一番多かったのだそう。
確かに台風や豪雨、地震など災害の多い年でした。
今年は、なんとか災害の少ない年であって欲しいと思います。
世界的には、自分の国さえ良ければ良いというような後ろ向きの閉塞感が漂っています。
でも、閉塞感に包まれて流されていくのでなく、『天上大風』的な素朴な願いを持って、少しずつでも良い方向へという気持ちを大切にしたいものです。
今年が皆様にとって良い年でありますようお祈り申し上げます。
住職記

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