お彼岸

 この間テレビで年金の話しをしていました。
日本国の年金制度はこの先しばらくは制度として破綻するようなことは無いが、将来的に年金の一人あたりの実質受取額が減っていくのは避けられない云々…というような内容でした。
私自身は、少し前まで年金については払うだけで幾ら貰えるとかはまだ先の話だなと思っていたのですが、改めて考えてみると年金をもらえる歳になるまであと10年、そろそろ貰える年金の額も考えるべき歳なんだと思い至り、いつの間にか増えてしまった自分の年齢に一抹の寂しさを感じました。
法事の際、回忌の回数を重ねるごとに最初は可愛い赤ちゃんだった子がいつの間にか小学生になり、中学生になるのを見て、「大きくなりましたね。お子さんが成長するのはあっという間ですね。〜さんも仏さまの世界で目を細めていらっしゃるでしょう。」などと分かったような顔で言っていましたが、なんのことはない、かく言う私自身も同じようにあっという間に歳を取っていたという訳です。
一年に一つずつ、人間の感覚や都合には関係なく、年齢は確実に増えていきます。
年齢の増えるのが止まった時、その年齢は石に刻まれ、その下に骨となって私達は収まることになります。
死は常に近づいてきています。

9月はお彼岸の季節。
お彼岸(ひがん)の彼岸とは、かの岸と言う意味で仏の世界を意味する言葉。
人間の悩みを越えた先にある安らぎの世界を意味しています。
お彼岸のお墓参りをして、今は亡き方々に線香を手向け、その人達の人生を思い返して下さい。
そして、その思い返した人生と今の自分と比べてみて下さい。
いつか同じように名前と年齢を刻まれて墓の下に入る私達が、今ここにいます。
彼の岸に到る前に、今生きているこちら側の岸でどう生きるか。
時は常に流れています。
時の流れは墓の下まで続いています。
さあ、今どう生きるか。
大切な問題です。
住職記

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