だるま様

 「だるま」というのは、実は禅宗の元祖とされるお坊さんの名前です。
五世紀から六世紀頃のインドのお坊さんで中国にやって来て時の皇帝と問答を交わし、そののち崇山の少林寺というお寺で九年間壁に向かって坐禅をしたと言われています。
禅宗では伝統的に菩提達磨(ぼだいだるま)、あるいは達磨大師(だるまだいし)と呼んでいます。
歴史的に本当に実在した人物なのか疑問視されていますが、禅宗の伝統では大変重要な存在です。

さて、群馬県には上毛カルタという、殆ど文化財と言ってもいいのではないかと思われる郷土のカルタがあります。
群馬県の歴史や有名な人物、名所、産業などをテーマにして作られたカルタです。
私が子供の頃は子供会や育成会で季節になるとこの上毛カルタの練習会があり、公民館などに集まって練習をしたものです。
群馬県民で上毛カルタを知らない人はまずいないと思います。
この上毛カルタの「え」の札は、「縁起だるまの少林山」。
縁起だるまというのは、赤くてまあるい張り子のダルマの置物のこと。
少林山というのは、お正月のだるま市で有名な高崎のお寺の名前。
一般的に、「だるま」と言われてまず思い浮かべるのは、この赤くてまあるい張り子のだるまだと思います。
そしてさらに「だるま」に関する言葉で誰でも連想するのは、「だるまさんが転んだ」か、「七転び八起き」といったところかなと思います。
達磨さんは、九年間壁に向かって坐禅を続けたことから、辛抱強く一つのことを頑張り続ける象徴のようになっているように思います。
転んでも起き上がるのが、達磨さん。
何回転んでも、何度でも起き上がる。
けっして諦めない。
禅宗のお寺にはよく達磨大師の絵が掲げられていることがあります。
彫りの深い顔立ちで、ギョロッとした大きな目が特徴的です。
絵によっては少し怖いようにも感じる大きな目。
あの大きな目は、九年間も壁に向かって坐禅をし続ける強靱な意志の強さを見る者に感じさせます。
選挙の時や、会社の神棚で良く目にする赤くてまあるい張り子のだるまさんにもまあるい大きな目が描かれています。
願いが叶ったときに片目を書き入れるという習慣もおそらくは、不屈の意志の象徴であるだるまさんの一番要の部分が目であるからなのかも知れません。

今月(十月)五日は、達磨忌といって禅宗のお寺では達磨大師の命日とされる日なので、だるまさんのお話しをさせて頂きました。
学問的には実在が疑われている達磨様ですが、私は実在した人だと思っています。
ふらっとインドから中国にやって来て仏教の大切な教えである禅を伝え、150才で死去したとされていますが、またふらっとどこかに行ってしまったという伝説もあります。
飄々としているけれども内に不屈の意志を持っている。
なんとなくそんな人に本当にいて欲しいと思い、少なからず憧れを感じる次第です。
住職記

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