すなわち正身端坐して

 曹洞宗の祖である道元禅師は、普勧坐禅儀という坐禅の指南書を書かれています。
多くの人に坐禅を勧めるために書かれた本です。
その中の一節に以下の今回取り上げた言葉が出てまいります。

「すなわち正身端坐して、左に側ち右に傾き、前に躬り後に仰ぐことを得ざれ。」
(元漢文)  注)側ち=ソバダち=傾き、躬り=クグマり=丸くなり

坐禅をする際には、左にも右にも傾かず、前に体が丸まったり後ろに反り返ったりしないように、まっすぐに坐りなさいということ。
現在の実際の坐禅の場に於いても姿勢をまっすぐにして坐るということは常に気をつけなければいけない大変重要なことです。
まっすぐに坐っていると、まっすぐな心になってきます。
この「まっすぐ」が大切ということは、坐禅に限らず、人生全般についても通用するように思います。
「まっすぐ」というのは、自然体というのとは違います。
人間の体は自然にしていれば楽な方に楽な方にと流れていきます。
体の姿勢でいえば、自然に坐っていれば自然に背中が丸まってくるはずです。
その丸まってくる背中を意識的にまっすぐに常に修正し続けるのが、「まっすぐ」ということ。
1回まっすぐにすればそれで終わりではありません。
常にまっすぐに修正し続ける。それが、「まっすぐ」です。

人生には色々なことがあります。
何があるか分かりません。
普段がまっすぐの(心の)姿勢であれば、必要に応じて左にも右にも前にも後ろにもすぐに動くことが出来ます。
様々なことに対処しやすいということです。
それに、なんだかんだと行き届かない策を弄するよりも、常に人生に対して或いは世の中に対してまっすぐな姿勢で臨んでいたほうが結局楽なのではないでしょうか。

今年のお正月は、令和になって初めてのお正月。
背筋をピンと伸ばし、まっすぐにして、まっすぐな一歩を進めて参りましょう。
住職記

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