花まつり

 四月八日はお釈迦様のお生まれになった日。
正式名称は灌仏会(かんぶつえ)と言いますが、日本では花まつりという言い方で親しまれています。
伝承ではお釈迦様はルンビニーという花園でお生まれになり、生まれてすぐ七歩歩いて「天上天下唯我独尊」(てんじょうてんがゆいがどくそん)と宣言されたと言われています。
これは、お釈迦様を尊ぶ気持ちから後世に付与された伝説だと思いますが、この伝説には仏教の大切なメッセージが含まれているように私には思えます。
仏教の一般的なイメージは、どうしても死や無常観、捨てても捨てきれない煩悩といった現実をマイナスに捉える方向性が強いと思いますが、珍しくこのお釈迦様誕生にまつわるお話しは現実をプラスの方向で語っていて、聞いた後にとても華やかで爽やかな感覚に包まれます。
人は必ず死にます。
でも、死があるというのは逆に言うと生まれるということがあるから。
死んでいくものと同じくらいの生まれて来るものがいて世界が成り立っています。
枯れた草木が春にまた芽吹くように、悲しいだけではなく、嬉しいだけでもなく、生と死のさまざまな交錯がこの世の中の実像です。
お釈迦様誕生にまつわるエピソードは、教科書に出てくるような仏教の基本の教えを背景にしてみると現実に対するマイナスの捉え方とプラスの捉え方とが融合したところに仏教の本当のメッセージはあるんだよということを結果的に示してくれているように感じます。
死は悲しいものです。
でも、死があるゆえに生は尊い。
授かったこの命は自分にとって最高に尊いんだという生命礼賛の言葉が「天上天下唯我独尊」という言葉であるように思えます。

 春は良い季節です。
お寺の隣で保育園をやっているのですが、満開の庭の桜を見ながら、入園式の練習で子ども達が思いっきり歌う歌を聴いていると本当に清々しく、心の中まで花いっぱいという感じになります。
願わくは、地震があったり大雨が降ったりコロナが流行ったり大変なことばかりではありますが、私達大人ももうひと頑張りして少しでも良い日本の国をこの子供達に引き継いでいかなければと感じる次第です。

住職記

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