布薩

 古来、仏教では半月に一度修行僧が集まって、戒律を正しく守っているか反省し懺悔(さんげ:仏教ではザンゲではなくサンゲと読みます)する布薩(ふさつ)という行事が行われてきました。
布薩とはインドの言葉のウポーサタの音写であり、漢字には音以外の意味はなく、意訳では斎、説戒などと訳されます。
仏教が始まる前から、新月と満月の日にお寺で説教をしたり特別な施しをしたりといった習慣がインドの社会に元々あり、それが仏教に取り入れられて修行僧の反省・懺悔の日となり、今に伝わっています。
人間にとって自らの行いを時々反省することは大切なことです。
私は趣味で山歩きをするのですが、慣れていない山道を歩くときは時々方位磁石や地図で位置を確かめながら歩かないと道を間違ってしまい、場合によっては迷ったり遭難したりという事態を招く危険があります。
今はスマホやGPSという便利な道具がありますが、いずれにしても自分の今の位置を確認しながら進むというのは登山や山歩きの基本です。
私達の人生は予想のつかない山道を手探りで進んでいくようなものです。
完全な地図は与えられていませんから、過去の情報や他の人の経験、自分の知識を総動員して現在の自分の位置や状況を把握しつつ進んでいくしかありません。
であるがゆえ可能性に満ちているとも言えますし、一寸先は闇とも言えます。
自分はどういう道をたどって今ここへ来ているのか?周りはどういう状況か?自分はどうしたいのか?そのためにはどうすべきなのか?
しばらく立ち止まり、よく考え状況を確認して前へ進んで行かなければなりません。

今月は師走。
誰しも忙しい季節です。
忙しい中にあってもしばらく立ち止まり、この一年の自らの来し方を振り返り反省し、次の年へ向けて心の準備をして頂ければと思います。
コロナ流行の先行きは不明であり、それに伴い経済がどうなってゆくのかも分かりません。
足元をよく見て、着実に歩を進めて参りましょう。
住職記

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