七仏通戒偈

 三月、冬から春へ季節が変わってゆく月であり、お彼岸の月です。
今年は北陸や北日本では例年にない大雪が降りました。
常仙寺のある群馬県高崎市では雪は何度か僅かに降った程度で積もると言うほどのことはありませんでしたが、地方によっては大変な思いをされた所も多かったことと思います。
雪国の人々にとって雪は苦労をさせられる厄介物とも言えます。
そんな雪も、どれほど沢山降っても春が来れば解けていずれ消えてゆきます。
季節は変わります。
寒さが緩んできて、鶯の鳴き声を聞くようになるとそろそろお彼岸。
お墓参りの季節です。
お彼岸というのは、もともと「彼の岸」つまり向こう側の岸という意味で仏の世界を意味する言葉です。
この仏の世界へ到るためにはどのようにしたら良いかを説いているのが、今回の今月の言葉で取り上げた七仏通戒偈(しちぶつつうかいげ)と言われる、
 諸悪莫作(しょあくまくさ) ― もろもろの悪をなさず
 衆善奉行(しゅぜんぶぎょう) ― もろもろの善を行い
 自浄其意(じじょうごい) ― 自ら心を浄くす
 是諸仏教(ぜしょぶっきょう) ― これが諸仏の教えなり
という言葉です。
つまり、悪いことをせず、良いことをして、自分の心をきれいにしなさい、これが仏の教えです。ということ。
誠に当たり前すぎるほど当たり前で簡単ですが、世の中本当に大切なことと言うのはそんなものなのかも知れません。
最近私は、法事の後のお話しの中で、手を合わせると言うことをどうぞ大切にして下さいとお話ししております。
手を合わせると自然に心が調いきれいになります。
手を合わせる―合掌という行為は善そのものではないかも知れませんが、自然に人の心を善に向かわせる力のあるものだと思います。
なるべく悪いことをせず、なるべく善いことをして、なるべく嘘をつかず、姿勢をまっすぐ、心をまっすぐにして、まっすぐに生きてゆく。
そのような心のあり方をこの 諸悪莫作 衆善奉行 自浄其意 是諸仏教 という言葉は伝えようとしているのではないでしょうか。
春の暖かさが、はやく雪国の大量の雪を解かしてくれますように。

住職記

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