花無心

 今回取り上げた良寛さんの詩は元は漢文で書かれており次のようなものです。
右側が読み下しです。

花無心招蝶  花無心にして蝶を招き
蝶無心尋花  蝶無心にして花を尋ねる
花開時蝶来  花開くとき蝶来たり
蝶来時花開  蝶来たるとき花開く
吾亦不知人  吾もまた人を知らず
人亦不知吾  人もまた吾を知らず
不知従帝則  知らずして帝則に従う

前半の花と蝶の部分は読んだとおりです。
後半の「吾もまた人を〜」以下の部分は、
世の中お互いに皆を知っているわけではないが、それでも自然と世の中は回っている、蝶も花も人もみな知らないうちに自然の大きな法則に従って生きている(生かされている)。
というような意味だと思います。

良寛さんは沢山の和歌や俳句や漢詩を遺されましたが、いずれも読んだ後なんとなくホッとするというか暖かいほのぼのとした気持ちにさせてくれるものが多いように思います。
この詩も花と蝶を題材にして無心の世界を描写していますが、読んでいてスゥーとその世界に入っていけるというか融通無碍な暖かさを感じる詩だと思います。
以前読んだ良寛さんの本の中に、「ある家に良寛さんが何日か逗留していった。良寛さんがいる間は良寛さんが何か特別なことをするわけではないのに家の中が和やかになり、良寛さんが帰ってからもしばらくは家の中が和やかであった…」というようなエピソードがありました。
言葉ではない、その人の佇まい・雰囲気といったものが自然に周りを感化するということがあるのだなと思います。

私的にはこのところ色々なことがあり、あれもやらなければこれも早くしなければ…というような毎日なのですが、五月の青い空で大きな口を開けてのんびりゆらゆら空を眺めている鯉のぼりを見ながら、ひとまず自分なりにやれるところまでやってみようと肩の力を抜いて思っているところです。

住職記

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