生と死

 お寺の近くの川の川岸に遊歩道があり、私はそこを毎朝四十分ほど歩いています。
四季の移ろいとともに川岸の様子は少しずつ変わってゆき、また、毎日歩いていると時々変わった光景に出会うことがあります。
春から夏にかけて良くあるのですが、アスファルトで舗装された遊歩道の上に周りから這い出してきたミミズが大量にうごめいていたり死んでいたりすることがあります。
アスファルトの上に出てきて日が昇れば、うごめいている内に日干しになってしまうことくらい分からないのかなと思いますが、やはりミミズにはそんな先のことを考えることは出来ないようです。
それにしても毎年繰り返される光景なのでミミズのこの自殺行為はなぜなのだろう?と、先日ネットで調べてみたところ、雨が降ると土中の水分が多くなり皮膚呼吸しか出来ないミミズは息が苦しくなって地面に這い出し動き回っている内にアスファルトの上に出てしまいその後日が昇ると逃げる間もなく干からびて死んでしまう…ということのようです。
ただ、科学的に良く分かっているわけではなく、雨が降った後に水の流れに乗って遠くの場所に移動するために地面に出てくるのだという説もあるようです。
いずれにしても、ミミズは体内の自然の命ずるままに行動し結果として自殺行為となっていると言うことのよう。
考えてみると、私達人間もああじゃないかこうじゃないかと考えを巡らし色々なことを集団であるいは個人でやって日々を生活しているわけですが、ことの最終的な成り行きや意味というのは個々の人間の思惑の埒外にあるように思えたりもします。
遠からぬ先にAI(人工知能)が人間の能力を超えたとき、人間という生き物はなんて馬鹿な行いをするのだろうと呆れられる時が来るのかも知れません。
そんなことをなんとなく考えながらミミズの死骸だらけの遊歩道を歩いていると後ろから通勤や通学の自転車がやって来てまだ生きているミミズも踏みつぶしながらサーッと通り過ぎていきます。
結局の所、ミミズはミミズの人生?を、人間は人間の人生を自分なりに生きていくしか無いのだなと前を向いて歩きながら思った次第。

しかし毎日暑いです。
ミミズもこの暑さの中で土の中にいるのではさぞ暑いだろうなと思います。
息苦しいのではなく暑すぎて出てきてしまうのか?とも思えます。
さあ、夏はまだしばらく続きます。
暑さに負けずに生きて参りましょう。

住職記

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