仏のおしえ

 「悪しきことをなさず、善きことをなし、自ら心を清くす、これ仏のおしえなり」
七仏通戒偈(あるいは七仏通誡偈)と呼ばれるこの言葉は本来は漢字で以下のように書かれます。
 諸悪莫作(しょあくまくさ)
 衆善奉行(しゅぜんぶぎょう)
 自浄其意(じじょうごい)
 是諸仏教(ぜしょぶっきょう)
これは古来、禅宗に限らず仏教の大切な言葉として取り上げられることの多い言葉。
道元禅師の著書「正法眼蔵」のなかにも出て参ります。
大変分かりやすい言葉で、野球で言うとピッチャーの投げる直球ど真ん中という感じで、分かりやすすぎてそれだけで良いのかな…とも思えます。
でもこの偈(言葉)はこの四つのフレーズだけで全て。
悪いことをせず善いことをして自らの心を綺麗にする
そうすると次第に心が整って仏の心に近づいてゆくことが出来る。
言っていることは単純で子供でも分かることです。
しかし、子供でも分かるけれども大人になっても老人になってもきちんと行うことは難しい。
行うことが難しいからこそ、そして大切なことだからこそ、短い偈にわざわざ題名を付けて取り上げるのでしょう。

今は、地球上のどことでも瞬時に会話や情報のやりとりが出来、様々な価値観が溢れ、何が善くて何が悪いのか良く分からない時代です。
自らの行動に迷った時、良く分からない時は、自分の胸に手を当てて自分の胸に聞いてみることです。
他ならぬ自分に聞いてみる。
これは善いことなのか悪いことなのか。
殺してはいけない。盗んではいけない。嘘をついてはいけない等々といった人間の善悪の基本は人間が生まれつき元々持っているものだと思います。
自分の心の中の素の基準からみてどうか。
自分の心に嘘をつかなければ、地球上どこにいても方位磁石が北を常に指し示すように、私達の心の中の基準が私達になんらかの示唆を与えてくれるように思います。

今年ももう師走。
ああじゃないか、こうじゃないかとあれこれ思っている内にまた一年が経ってしまったという方も多いのではないでしょうか。
迷っている内に人生は終わってしまいます。
自分の内なる声に耳を傾けて、自分なりの直球ど真ん中へ向けて行動していってはいかがでしょう。
住職記

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