渓声便是広長舌

 四月、春本番です。
今年は冬が寒かったせいか桜の咲くのが遅く、関東では今月に入って桜の見頃を迎えました。
道元禅師の有名な歌に「春は花、夏ほととぎす、秋は月、冬雪さえてすずしかりけり」
というものがあります。
季節それぞれの美しさを詠った歌ですが、冬の冴え渡った雪景色が終わり、三月の末から一挙に桜の花が世の中にあふれ出るこの時季は、まさに体いっぱいに”春”を感じさせてくれます。
最近はインバウンドと言われ外国の人がたくさん日本にやってくるようになり、ネットのSNS等で「桜の花が綺麗なのにびっくり!」というような投稿や映像をよく見かけますが、外国の人に言われるまでもなく春になって一挙に満開になる桜の花の見事さは我々日本人自身がよく分かっています。
美しい自然は、それに触れた人の心と体をリフレッシュし、活力を与えてくれます。
自然という言葉は、自ずから然ると書きます。
そのままありのままということ。
自然のありのままの美しさに触れると、人の心もそれに影響されて本来の自然な素直な状態に戻ってくるのだと思います。
上に挙げた歌を詠った道元禅師が仏の道を求めるに当たって大事にされたのが”坐禅”。
坐禅も人の心を本来の自然な状態に導くものです。
美しい自然と坐禅の心にはどこか通じるものがあります。

道元禅師の歌の冒頭は、春は花。
花は、人の心を明るく和やかにし活力を与えてくれます。
今の時期山に行くと、雪解けの清冽な水がキラキラと谷川に流れ、私達の心を清めてくれます。
花がそして山や川などの自然が人の心に働きかけるとき、そこには何の忖度も動機もありません。
ただ美しく。
ただ清々しく
ただ気持ちがいい
自然は自然に人の心を元のニュートラルな素の状態に戻してくれます。
四月は学校や会社で新しい年度が始まる季節。
満開の桜で気分を一新し、新しい年度を新しい気持ちで始めて参りましょう。
住職記

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